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広島家庭裁判所福山支部 昭和34年(家)812号 審判 1959年10月26日

申立人 柳原ツル子(仮名)

事件本人 亡柳原太一(仮名)

主文

事件本人柳原太一が申立人に対して昭和二〇年五月二八日当時宮崎県東臼杵郡○○町大字○○七○○番地岡本タカ子の懐胎していた胎児(同胎児は昭和二〇年一一月○日に出生し、恵子と命名され現在筆頭者柳原三郎戸籍にある)に対する胎児認知届出の委託をなしたることを確認する。

理由

申立人は主文同旨の戸籍届出委託確認の申立をなすもので、その理由の要旨は、事件本人は昭和一九年暮頃宮崎県東臼杵郡○○町大字○○七○○番地岡本タカ子と事実上の夫婦となり爾来同棲生活中、右タカ子は間なく事件本人の子を妊娠するに至ったが、事件本人は海軍軍人として軍務に服していた関係で、昭和二〇年初め頃宮崎県富鷹海軍航空隊より山口県岩国海軍航空隊に転勤を命ぜられたので、右両名は住居を岩国に移して生活を営んでいたところ、事件本人は昭和二〇年五月下旬頃急遽中支上海に転勤の軍命令を受け直ちに輸送船姫宮丸に乗船し上海に向う途中、同年六月一四日東支那海方面において戦死したものである。而して申立人は事件本人が右輸送船に乗船する寸前に岩国まで赴き事件本人と面会した際に事件本人より前記胎児の認知届出の委託を受けたものであるからこれが確認を求めるというにある。

仍つて審案するに筆頭者柳原三郎、筆頭者亡岡本徳三の各戸籍謄本並びに申立人の供述(但し右戸籍謄本並びに申立人の供述は、別件当庁昭和三四年(家)第五九七号戸籍訂正許可申立事件につき審理せしものを援用する)等に徴すれば、本件事件本人より申立人に対して岡本タカ子の懐胎せる胎児を認知することの戸籍届出の委託をしたことはこれを確認することができるので、戸籍法第一三八第二項により主文のとおり審判する。

(家事裁判官 河相格治)

(広島家裁福山支部昭三四(家)五九七号戸籍訂正許可申立事件[申立人]柳原三郎(仮名)[事件本人]柳原恵子(仮名)昭三四・一〇二六審判認容)

主文

本籍福山市○○町乙○○番地の一筆頭者柳原三郎の戸籍中、姪恵子につき、身分事項欄中出生届出人の資格並びに氏名「父柳原太一」とあるを「同居の親族祖母柳原ツル子」と訂正することを許可する。

理由

申立人は主文同旨の申立をなすもので、その理由の要旨は、事件本人柳原恵子は、柳原太一と岡本タカ子との事実上の夫婦間の子として昭和二〇年一一月○日福山市○○町○○○番地、岡村ユミ方において出生したものであるが、その当時柳原太一は海軍軍人として、服務していたので、右恵子に対する出生届は柳原太一の母柳原ツル子が昭和二〇年一一月一六日福山市役所に出頭し太一名義で届出したものであり、その後昭和二三年六月一二日に至り太一は事件本人恵子の出生前、昭和二〇年六月一四日東支那海方面において戦死したとの広島県知事よりの公報を受けたものである。従つて事件本人恵子の身分事項欄中出生届出人の資格並びに氏名父柳原太一とあるは錯誤ある出生届に基く戸籍の記載であるから出生届出人の資格並びに氏名を同居の親族祖母柳原ツル子とするため、これが戸籍の訂正の許可を求めるというにある。

仍つて審案するに、本件申立書に添付せる筆頭者柳原三郎の戸籍謄本、並びに申立人の当審判廷における供述に、証人柳原ツル子、同長井カノの各証言を綜合し判断すれば、本件申立はこれを理由あるものとして認め得るので戸籍法第一一三条、及び特別家事審判規則第一〇条により主文のとおり審判する。

(家事審判官 河相格治)

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